お米の基礎

たかがお米、されどお米。日本人だからこそ知っておきたい お米という食物のこと

まず、基本中の基本から。
お米がこの世に農作物として、植物として生まれてきた時点では、その名前を稲といいいます。
その稲から実の部分だけを取り外した状態になって、米と呼ばれるようになります。
米は、外から籾殻、糠、そして白米部分に分けられ、それぞれ籾殻は籾摺りを経て玄米に、玄米から糠は米搗きという作業を経て白米へとなります。
その白米や米搗きをする前の玄米を炊いた物がご飯です。

当たり前じゃないかとお思いの方も多いかもしれません。
しかし、大人相手の講座でこの質問をして、満点の回答をいただけることはほとんどないのです。
逆に、今の小学生は授業の中でお米について学び、実際にバケツ稲栽培などもしています。
意外に、子ども達の方がよく知っていたりするのです。
個人的には、唯一(に近い)ゆとり教育の正の財産ではないかと思っています。

重要

従って呼称は違えど、稲と米は同じものを指すわけです。
ここは大事です。
これからお米の本質を書いていく中で、稲という言葉と米という言葉が混在します。
しかし、あくまで大きく同じものを指していると認識してください。

2000年以上続く、稲作の歴史

農業としての稲作はいつ、どのようにして始まったのでしょうか。
これは歴史の世界のお話になりますが、我らがご先祖様は弥生時代に「大陸から低地定住型農耕が伝わり、狩猟を基礎にした生活から農耕を基礎にした生活へと変遷した」ということです。
そしてこの低地定住型農耕こそが稲作であるとされています。

つまり、日本における稲作の起源は弥生時代に大陸から伝わったということなのです。
それから連綿と2,000年以上、日本人は稲作を続けているのです。

2000年以上続く、米食の歴史

もちろん稲作がはじまったということは、同時に米食もはじまったということになります。
ここでもつまり、日本人は2,000年以上にわたってお米を主食とし続けているということなのです。

また、この低地定住型農耕の開始がもたらしたものとして、いわゆるムラ文化があげられています。
村の中で共同体を作り、ルールを決め、みんなが同じように生活をして利益を分配し、幸福も享受するというシステム。
これは今に至っても日本人の精神の根幹にあり、まさに日本人の精神文化、社会風土を表現するものとして使われます。

長い物には巻かれろ、泣く子と地頭には勝てない、親方日の丸などといった言葉はこのムラ社会分化から生まれました。
もちろん現代ではマイナス要素にもなっており、慣れ合いもたれ合い社会、一億総談合社会などと表現もされます。
しかし、この小さな島国に生まれ育ち、基本的には同一言語の単一民族国家として暮らす以上は、良くも悪くも否定しきれないものなのです。

米の価値が飛躍 日本人の歩みの中心に

米の価値が飛躍 日本人の歩みの中心に

こう考えると、つまり現代まで続く日本人の精神文化であるムラ社会文化は、稲作の起源と同時に発生し、その広まりや定着とともに育ってきたと言えるわけです。
ここが、米が日本人の精神の土台となり得る理由であり、まさに我々に残された数少ない日本人としての精神と言えるわけです。

そして、時を経て、米は大きく変化してきました。
江戸時代までは通貨の役割すら果たし、加賀百万石という言葉に代表されるように、その収穫高は権勢を誇示する表現として使われました。
太平洋戦争前後の統制時代には、その購入に必要な米穀通帳が身分証明書となりました。

まさに、日本人の歩みのど真ん中に位置してきた存在なのです。
そのお米が更なる変化を遂げたのが、昭和27年に「越南17号」として世に生まれ、昭和31年に「農林100号」として登録された、その名もコシヒカリの登場でした。

各米産地が良食味品種を開発し、競争する時代へ

各米産地が良食味品種を開発し、競争する時代へ

この頃から、戦後復興の順調な歩みと豊かな生活の実現も背景として、良食味品種が開発されていきます。

東京オリンピックの開催された昭和38年には「水稲農林150号」ことササニシキが登場し、北陸のコシヒカリと東北のササニシキの2大銘柄時代が長く続きます。
経済大国となった後の昭和59年にはあきたこまちが、元号が変わり平成3年にはひとめぼれが登場し、ここから各米産地がそれぞれの土地や気候にあった良食味品種を開発し、競争していく時代へと突入していくことなります。

この流れは現在まで続いており、長らく「質より量」という状態だった北海道からゆめぴりかやななつぼし、九州地区からヒノヒカリや森のくまさん、にこまるが登場し、まさに群雄割拠という時代になりました。

忘れてはいけない事件 東日本大震災によって改められた「安全」への意識

忘れてはいけない事件 東日本大震災によって改められた「安全」への意識

そしてもうひとつ、忘れてはいけない事件がありました。

東日本大震災です。

この震災によって福島第一原発が破壊され、放射能汚染が消費者の不安をかきたてました。
福島県では今に至っても全量検査を行っていて、その安全性は確実なものとなっていますが、この一件を契機に、今まで聖域化されていた稲作の分野にも「安全」という大きな概念が植え付けられるようになったのです。

詳しくは品種紹介等でお伝えしますが、平成30年産から岩手県平泉地区の9軒の生産者が、農業の安全基準と言えるASIAGAPを取得したことなどは、この安全を約束するという概念の最先端と言えます。

忘れ去られてしまった お米への感謝 当たり前じゃなくなってしまった当たり前のこと

しかし、こうした中で忘れ去られたこともあるように感じています。
お米は「そこに有ること」が当たり前で、食べられることに対するありがたさや、実際に口にするまで多くの人々の苦労や丹精が込められていることに対する感謝の気持ちが薄れてきているようなのです。

実際に、平成5年の冷害を原因とする大凶作によりいわゆる外米が輸入された際には、その袋を破って地面に撒き散らすなどといった不届きな映像も流されました。

当店はコイン精米機を設置していますが、床にお米をこぼして踏んづけて平気で帰っていく人達のなんと多いことか。
ご飯粒を残したら神様に怒られる、お米を踏んづけたら目が見えなくなるといった、もちろん迷信に基づいてはいるのでしょうが感謝を教えるということが、すでに当たり前ではなくなってきていることを、ひしひしと感じています。

20年後「お米がそこに有る」ことは当たり前ではなくなる 今、私たちにできることとは。

農家も超高齢化を迎え、廃業する人達も増えてきました。
あるいは次世代はすでに都市でお勤めをしていて、先代が亡くなった後に残された農地を相続で売却し、住宅に変わってしまったという例も数多く目にするようになりました。
もはや、20年後には「お米がそこに有る」ことは当たり前ではなくなってくるのです。

当たり前に有ったお米と、当たり前に有ったそれに対する感謝の気持ちがともに当たり前ではなくなり、そしてそのお米は日本人の精神の象徴となると...今一度、お米に対して真摯に向き合うことを、少なくともこのサイトをご覧頂いている方々にはおすすめいたします。

五つ星お米マイスターによる お米との付き合い方

select お米を選ぶ

予めご承知おきいただきたいのは、"おいしい"という言葉と感覚を司るのは、主観であるということです。"おいしい"をお教えすることはできません。

しかし一方で、最も得意とするのは、"おいしい"と思っていただくことのお手伝いをすることなのです。

"値段で選ぶ"が一番もったいない!

その上で、お米を選ぶ際にもったいないこと。
それは、"値段で選ぶ"ということです。
「安いものだから」「高いものだから」という考えが頭にあるだけで、お米の本当の味は曇ってしまい、それを食べることで得られる感動は必ず減少してしまいます。

高価なお米が美味しい、というわけではありません。
どちらかと言えば、クセがなく"誰からも一定の評価を貰える優等生"と思って頂いた方が良いでしょう。
逆に安価なお米はクセが強い傾向がありますが、そのクセが大好きと感じる方もいるのです。

相性のいいお米は、自分と出身が同じことが多い

本当に自分に合ったお米を見つけるためには、やはり色々と味わいながら、手探りで探していくしかありません。
お米マイスターに味の好みや食感、香りなどをお伝えいただければある程度候補を絞れるかもしれませんね。

もしも、もっと手軽に自分に合う米を探したいという方は、ぜひ自分の生まれ育った土地のお米を食べてみてください。
それはおそらく、あなたがこれまで一番多くの回数を食べたお米であり、味に対する価値観の基礎になっているはずですから。

rice chest お米を保存する

お米を保存する容器は大きく分けて、ハイザー、金属製、木製、プラ製の4種類があります。

それぞれ値段もさまざまですが、メリット・デメリットどちらも存在するものです。

容器のメリット・デメリットを踏まえて賢く保存しよう

ハイザー

ハイザーは手入れの難しさから、衛生環境を悪くしてしまう

金属

金属はどうしても継ぎ目に汚れが貯まりやすい

木製

木製のものはお米にやさしいものの虫にもやさしい

五つ星お米マイスター オススメ!こだわりがなければプラスチック製にすべし

上記「ハイザー」「金属」「木製」のメリット・デメリットを記載致しました通り、すべてが完璧というものはありません。
ですので、大きなこだわりがないのであれば、プラスチック製のものが一番良いと言えるでしょう。

プラスチック製は透明なので虫が嫌う光を取り込むことができますし、水洗いができるなど手入れも簡単で、古くなったら気軽に捨てられる値段の安さも魅力です。

お米を"ちょっと暑がりな恋人"だと思って、保管場所を考えよう

最近では「冷蔵庫で保存すると良い」という噂もありますが、余程きちっと密閉をしない限り、お米は外気を吸収しやすいため、冷蔵庫の中のにおいがついてしまったり、湿気がなくなりパサパサした食感になってしまうことも考えられます。

"ちょっと暑がりな恋人ができた"と思って、彼が過ごしやすいと思ってもらえるような、湿度・温度のところで保存してあげるのが一番です。

steam rice お米を炊く

基本的には、あまり小手先の技術は使わず、普段やっているやり方で炊けば問題ありません。

我々のような米屋は、どんな炊き方でもおいしくなるように調整していますし、最近の炊飯器は性能も高くなっていますから、従来通りのやり方をすれば、お米本来の味を正しく引き出すことができるでしょう。

世の中に流れている噂に左右されず、正しい知識で炊きましょう

例えば「研いだあと、ザルにあけて寝かせると良い」なんて噂を耳にしたことがありますが、水分を飛ばしてお米の表面をカサカサにしてしまう行為なのでおすすめできません。

世の中にある噂は基本的には信じない方が無難と言えます。

五つ星お米マイスターが教える お米を美味しく炊くテクニック

敢えてテクニックをあげるとすれば、お米をボウル等で研いだ後、それを炊飯器にセットする前に水に浸した状態で冷蔵庫で冷やしてみるのが良いですね。
研いだだけのお米は水よりも温度が高くなっており、この温度差で炊き上がりの質が微妙に変化をしてしまいます。

その温度差を無くし、ゆっくりと炊き上げられるようにするために、お米を冷やすのは非常に効果的なんです。

eating お米を食べる

少々哲学的なお話になってしまうかもしれませんが、やはり"感謝の気持ち"を持って食べることが、お米をおいしく頂くための一番の近道だと思います。

お米選びでも同様のことが言えますが、「試しに食べてみてやろう」「高いのだからおいしいのだろう」といった食べ方をしてしまうと、どうしても減点方式の採点になってしまい、おいしく感じることができなくなってしまいます。

世間の"美味しい"ではなく、自分が"美味しい"と思えるものを。

お米は、作るのも、売るのも、買うのも、食べるのも、全部人間が行うものです。
だからこそ、糖度や製法、ブランドといった情報に惑わされるのではなく、自分自身の価値観をしっかり持った上で、味とだけ向き合うことが大切です。

ここでも、自分が生まれ育った土地のお米を選択するのは効果的です。
俗に言う"おふくろの味"と同じで、なによりも一番食べなれている味ですし、あなた自身が持つおいしさの基準にもなっているはずですから、失敗したと思うことはないでしょう。

「お米を選ぶ」のコーナーでもお話しましたが、"おいしい"は主観です。
人の数だけ"おいしい"はあるのです。
世間がおいしいと言うものよりも、自分がおいしいと思えるものを食べるようにしてください。

お米について、興味を持っていただけた方へ

最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
実はここに綴らせて頂いたものは、ほんの一部でございます。
お米について皆様にお伝えしたいことはまだまだ沢山あり、お米マイスターとしてもっともっと有益な情報を発信し続けていきたいと考えております。

ここまでお読み頂き、少しでもお米について興味を持っていただくことがございましたら、是非当サイトで発信している「おこめでぃあ」の記事もご覧ください。

あなたの米食生活が少しでも豊かなものになりますように。